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漢方の暮らし 第83話 寒がり水毒と暑がり水毒

2024年3月25日

 一見水太りでいかにも「水毒」のある人には二つのタイプがあります。
冬に調子が悪くなる人と、夏に調子が悪くなる人がいます。

 寒がりで冬の季節や寒い日に調子が悪くなる人は「寒湿タイプ」といいます。
多くの方はクーラーや冷たい食べ物で調子が悪くなり、浮腫みや膝の痛み、頭痛、眩暈などの不調を抱えています。

 熱がりで汗っかき、冷たい飲み物やクーラーが好きな人は「湿熱タイプ」です。
ジュクジュクした皮膚病や、体臭、口臭などの不調に悩みます。

 どちらのタイプの方も運動や食事などの生活習慣の偏向の結果起こっている症状、つまり自己責任になります。
特に「湿熱タイプ」の方は病院の血液検査で、糖尿病や高脂血症、高血圧を指摘されるようになるので、若いうちから食生活、運動などの生活習慣の改善が急務です。
 「寒湿タイプ」「湿熱タイプ」どちらも原因となる生活習慣があるのです。
原因となる生活習慣を見直すことが必要です。

 寒涼性
  冬瓜、ナス、小麦、ごぼう、大根、きゅうり、トマト、豆腐、白菜、バナナ、梨、柿、そば、緑茶、塩、
 白砂糖など

 温熱性
  生姜、シナモン、山椒、にんにく、羊肉、鶏肉、エビ、もち米、黒砂糖、栗、八角、長ねぎ、香菜、
 松の実など

 平性
  長いも、大豆、とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、卵、クコの実、うるち米、はちみつ、黒きくらげ、
 ニンジンなど

 「寒涼性の食材は水分のある野菜や果物が多く、体を冷やすなど余分な熱をとるのに役立ちますよ。
一方で温熱性の物は、生姜やにんにく、ねぎなど辛い物や刺激のある食材が多く、血液の流れを良くして新陳代謝を促進します。
どちらにも属さない平性は、米などの穀物系や体のエネルギー源になる食材が多いですね

漢方の暮らし 第82話 水毒の二つの原因

2024年3月19日

 「水毒」が起こる原因の一つは、外からの「湿気」です。
例えば、日本の梅雨時のように「湿気」が高い季節、また「湿気」の多い所で働いたとか、雨に打たれたとかの原因で起こる停滞を「外湿」といいます。

 「水毒」のもう一つの原因は、胃腸の働きの低下によって起こるものです。
生ものや冷たいものの過食、脂っこい食事、飲酒過多などで胃腸の働きを悪化し、水捌けが悪くなった状態です。
これを「内湿」といいます。

 「外湿」は自分でコントロールすることができませんが、「内湿」は改善可能です。
普段、胃腸の働きに自信ある方でも、飲みすぎ、食べすぎ、刺身などの生ものや冷たいものの摂りすぎなどで一時的に「水毒」の症状が出るのを経験されているでしょう。

 日本の夏は「湿気」が多く、また日本人は胃腸の弱い体質といわれ、「水毒」の症状がある人は多いのです。
さらに、「内湿」のある方は、外からの「湿」も呼び込みやすいのです。
 「浮腫み」の症状に関して、西洋医学では「利尿剤」の内服や塩分を控えるなどの対策を取ります
 漢方では「五臓六腑」のチームで改善する方法を取ります。
活躍するのは「脾」「肺」「腎」です。

 「脾」の役割は、「水」の生成と運搬です。
 「肺」の役割は、「水」の運搬と排泄です。
 「腎」の役割は、「水」の再吸収と排泄です。

 暑さや湿度は胃腸を苦しめ、寒さは「腎」の働きを低下させ、乾燥は「肺」の働きを悪くします。
冬の寒さは夜間尿や尿漏れに、夏の暑さと湿気は浮腫みや眩暈や痛みに、秋の乾燥は肌荒れや皮膚病のおもな原因になります。


漢方の暮らし 第81話 尿漏れや頻尿は大丈夫ですか

2024年3月15日

 まだまだ寒いこの頃、夜間尿尿漏れするようになったという方、いませんか。
それは「腎」が弱っている証拠です。
寒い季節は、「腎」の働きに影響しやすいのです。
 ちなみに「腰は腎の器」といって、腰が痛くなったり、すぐに座りたくyなったり、つまづきやすくなったらそれも「腎」が衰えた証拠です。

 「腎」には「精」を貯蔵する働きのほかに、尿を体内に貯めたり、排泄したりする機能もあります。
なので、「腎気」が衰えると、まず尿に異常が起こります。

 「腎陰」が衰えると、小便が出渋りが起こったり、尿が赤くなります。
 「腎陽」が衰えると、頻尿、尿が薄くて量が多い、夜間尿、遺尿、失禁などの症状が起こります。

 頻尿を防ぐ食材とは

 老化による頻尿には、腎の働きを高める黒い食材がおすすめです。
黒きくらげ・黒豆・わかめ・ひじきなどがあります。
 また、カラダの冷えを防ぐために辛味の食材もおすすめです。
しょうが・ねぎ・シナモンなどがあります。
 緊張やストレスには、気の流れをよくするレモンなどの柑橘系などがあります。
 それぞれ、自分の体質に合わせた食材を選んでいくことが大切です。

頻尿が気になる人は冬の過ごし方に注意

 冬は、人の成長・発育・生殖のために必要な腎に大きな負担をかけます。カラダの中の気や血の巡りも滞ってしまうため、カラダの中の血行や代謝も低下します。
 漢方では、腎の機能が衰えやすい冬は老化が促進しやすいと考えられています。
冬は、ダイエット・冷たいもののとりすぎなど、体に負担がかかることは控えましょう。
他の季節よりもしっかりと睡眠時間を確保することも大切です。
 漢方では、冬は普段より早い時間に寝て、朝は太陽が出たころに起きるのがよいと考えています。
腎を消耗すると、頻尿だけではなく、耳鳴りや白髪など老化の原因にもなります。
また、冬に養生をしておかないと、春になっても手足が冷えたり、気温の変化に対応できなくなったりするなど、春の不調を引き起こすことも考えられます。

漢方の暮らし 第79話 アンチェイジングの鍵を握るのは精

2024年3月8日

 「腎」「精」を貯蔵しています。

「気」とか「精」とか、西洋医学では実体を証明できないものですが、「気力」とか「勢力」とか言えばわかりやすいでしょうか。
ざっくり言えば、「腎」「精力」を蓄えているのです。

 中医学の「腎」に宿るという「精」とは「成長・発育などの生命エネルギーの源となる栄養物質」だとされています。
 現代的に言えば、「精」は「成長ホルモン」「生殖ホルモン」のような物質だと考えています。
具体的に言うと、子供の成長や、男子では精子を作ったり、女子は月経や卵子の生成などに関係しています。

 そこで、「精の不足」は、子供では成長の遅れ、男子では精力減退、女子では月経不順・不妊などに関係するのです。
 また解剖学的な副腎に相当する働き、つまり免疫力などの働きもあります。

 以上の点から、一番重要な問題である「老化」にも深く関係しているのです。
そう考えると、すごく大事な働きじゃないですか。
「腎」の働きは、若さを保つのに一番関係あるのです。


漢方の暮らし 第77話 冬のおすすめ早寝と朝寝坊

2024年3月2日

 「黄帝内経」には、冬は早寝して朝寝坊するくらいの方が良い、記載されています。
朝が苦手な方にはビッタリですね。

 一年には「陰陽」の移り変わりがあります。
3月の春分の日は朝と夜の時間が同じになって、そこから本格的に「陽」の出番です。
冬に蓄えたエネルギーを少しずつ外に出していく季節です。

 6月の夏至は「陽気」が最も盛んになって木々は生い茂り、「万物が成長する季節」です。
エネルギーが一番高まる季節、長くなった一日を有効に過ごすために、夜は遅くまで起きて仕事をして朝は早く起きるのが良いのです。

 9月の秋分の日からまた「陰陽」が入れ替わり、「陰」が生まれ、「万物が成熟して収穫される季節」です。
少しずつ冬の陰に備えてエネルギーを蓄え始める時です。

 12月の冬至は「陰」が最も深くなり、「万物の生気が閉じこもり、陽の季節に備えて休養する季節」です。
冬は春や夏の成長を促し、秋に収穫を迎えるためのエネルギーを蓄える季節なのです。
 無理な活動を控えて、遠慮しないで、のんびり過ごしたい方に都合の良い季節です。

漢方の暮らし 第76話 自律神経はバランスが大事

2024年2月18日

 自律神経は心臓の拍動や呼吸、胃腸の消火などを担当している神経です。
自律というように、昼も夜も規則正しく、私たちの意志と無関係に働いています。
そうでないと、そそっかしい人がうっかり呼吸を忘れてしまったり、心臓を止めてしまったりしたら大変なことになりかねますからね。

 昼間は明るい日光の「陽の世界」「交感神経」が働き、夜は暗い「陰の世界」に入って昼間の活動をメンテナンスするために、「副交感神経」が勝手に働いているのです。

 しかし最近では「陽と陰」、つまり昼間と夜の境が曖昧になりがちです。
夜遅くまで残業で働いたり、深夜営業の人、病院の看護士など昼夜が逆転している人もいます。
 なるべく「陰陽の法則」を守らなければなりませんが、そうはいっていられない現状もあります。

 そのような方は、照明や暗さをご自分のペースに合わせて意識的に「陽と陰」を作って、バランスをとることも一つの方法かもしれません。
 逆に「交感神経」が働かず、休んでばかりいる人もそれはそれで健康を害することがあります。

 活動と休息、つまり陽と陰、交感神経と副交感神経、どちらもバランスが大事なのです。

漢方の暮らし 第75話 すべてのものに「陰」と「陽」がある

2024年2月12日

 「あなたは陰気な方ですね」といわれたら、どう思いますか?
あまりいい気がしないという方が多いかもしれませんね。
人間の場合は、暗い人より明るい人の方が好印象です。

 しかし「陰」は、なくてはならない必要なものなのです。

 それでは具体的に「陰」と「陽」についてみていきましょう。
例えば、一日で考えると太陽が出ている間は「陽」になるので積極的に行動し、太陽が沈み暗くなると「陰」になるので、睡眠に備えてカラダを休めるといった考えがあります。
 お昼まで寝ていたり、夜遅くまで起きていたりすると、カラダがだるくなったり不調になったりします。
この状態は「陰陽」のバランスが悪くなっているからだと考えられます。
健康な人は、「陰陽」のバランスがよく、病気になりにくい状態を維持できます。
一方、病気になる人は、「陰陽」のバランスが崩れており、病気になりやすいと考えます。

 また、男女で考えると、男性が「陽」で女性が「陰」にあたります。
男性と女性がいなければ新しい命を生み出すことができません。

 陰陽学説で考える“季節”もカラダの状態を判断したり、治療や養生に応用することができます。
春から夏は「陽」の気が盛んになるため活発に行動するように、秋から冬にかけては「陰」の気が盛んになるため行動を控えるようにと考えています。
 例えば、漢方には、夏の過ごし方は冬の病につながるという考え方があります。
これを「冬病夏治(とうびょうかち)」といいます。
夏は、暑いからといって、冷たいアイスを食べすぎたり、クーラーの部屋に長くいるとカラダが冷え切ってしまい、冬に病気を起こしやすくなるという考えです。
夏の間は、「陽」の気をカラダにとりいれるために、活発に動くことが大切です。

 一方、冬は「陽」の気が少なくなるため、植物や動物と同じように、人も活動を控える季節です。
冬には、人が生きていくために必要な気を発散させないように、過度なダイエットをしたり、新しいことをはじめるなどといった行動は控えた方がいいでしょう。

 ただし、漢方では、あくまでもバランスが大切だと考えられています。
「陽」が盛んなときに動きすぎると「陰」を損傷しやすく、「陰」が盛んなときに行動を控えると「陽」を損傷しやすくなります。
漢方には「中庸(ちゅうよう)」という言葉があり、過不足なくほどほどにという考えがあります。

 なにごともその人にとってちょうどよい状態を保つことが大切です。
このように「陰と陽」は人間が生きていくためには大切な要素なのです。

漢方の暮らし 第74話 寒熱のルール

2024年2月8日

 漢方では、普段家庭で使われているような食材についても、いくつかのルールがあります。
その一つが「寒熱」のルールです。

 具体的には、身体の不調が起こったときに、その原因が「冷え」からきているのか、「熱」からきているのかを判断する必要があるということです。

 西洋医学でも腰痛や膝の痛みの場合に、温湿布か令湿布かを使い分けます。
しかし生理痛や腹痛の場合は主に痛み止めの薬が処方され、寒熱の区別を確認されることはありません。

 漢方では生理痛、頭痛、腹痛などをはじめほとんどの不調の治療で、必ず原因が寒さなのか熱なのかを区別して処方を選びます。

 食材にも「寒熱」の区別があります。
身体を冷やす傾向のあるもの、温める傾向のあるもの、どちらでもないものに分かれ、「玲・涼・平・温・大熱」の区別があります。

 ・ 土の中で育つものは身体を温めるものが多い
    人参・山芋・生姜・葫・玉葱・らっきょうなど。
   ただし大根と牛蒡は冷やす食べ物なので鍋物など調理で工夫してください。
 ・ 香辛料は身体を温める
    唐辛子・胡椒・山椒・丁子・ターメリック・シナモン・カレー・キムチなど
 ・ 牛肉・鶏肉・豚肉は身体を温める
    特に羊肉は身体を温める力が強いです。
 ・ 鯵・秋刀魚・鮪・鰻など脂ののった魚、鮑・海鼠・海老などは身体を温める
    海老は温める食材、蟹は冷やす食材です。
 ・ 暑い季節にとれるものや南国でとれるものは身体を冷やす
    胡瓜・茄子・トマト・西瓜・苦瓜・パイナップル・バナナ・マンゴー・キウイフルーツなど
 ・ 青・緑・紫・白など寒色のものは身体を冷やす
    茄子・苦瓜・緑豆・白砂糖など

漢方の暮らし 第73話 立春の日には

2024年2月3日

 立春は冬から春に変わる喜ばしい日といわれています。
冬に眠っていた動物は冬眠から覚めて、草花は地面から顔を出し始めるころです。

 旧暦の頃は立春の日が一年の始まりと考えられていたといいます。
つまり、立春は正月に当たり、前日の節分は大みそかになります。
 中国では春節といって、日本の正月に当たり、連休になり、爆竹を鳴らしてお祝いします。

 節分には、新しい年に鬼が来ないように豆まきをしますが、この豆を年の数だけつかんで食べると一年中健康に過ごせる言い伝えがあります。
 節分の日には鰯の頭を柊で刺して、玄関に飾るという風習もあります。
鰯の臭い匂いと柊の棘で鬼が退散するそうです。
 禅寺では、新しい年が大吉であるように「立春大吉」と書いて門前や家の玄関にお札を貼るそうです。

漢方の暮らし 第71話 食べ物には季節と色があります。

2024年1月29日

 「陰陽五行説」では、それぞれの臓器には季節と色と味があるとされています。

 食べ物にはそれぞれの季節ごとに、健康に良いと言われる「五色」「五味」があります。

 例えば、「肝」の高ぶりが起こりやすいには「青い食べ物」「酸っぱいもの」を。

 の暑さで「気」を消耗して精神が不安定になったときの食べ物は「赤い食べ物」「苦い味のもの」を。

 梅雨の季節に胃腸の働きが悪くなっているときは「黄色い食べ物」「甘いもの」を。

 には乾燥で肌荒れが起こる季節には「白い食べ物」「辛いもの」を。

 の寒さに耐えてエネルギーを蓄える季節には「黒い食べ物」「塩辛いもの」を。

 春は、ほうれん草など青いものが、夏にはスイカやトマトなど赤いものが、秋には木の実など白いものが出回り、冬は秋に収穫した食べ物を塩で保存しています。