2025年7月3日

 身体の常識 第64話 肝臓は怒りの器

2025年7月3日

 ストレスがたまると健康に悪いということをよく耳にすると思います。
 東洋医学の世界では、感情と臓器に密接な関係があると言われていることをご存じでしょうか?
東洋医学の考え方における陰陽五行説では、”五臓には感情が宿している”と考えられていて、臓器の不調が負の感情を抱えやすくなったり、無意識のうちに我慢して溜め込みすぎた感情が直接臓器を痛めつけ、様々な身体の不調を引き起こす原因になると考えられてきました。
たとえば、「イライラする」などという怒りの感情は、肝臓に深く関係しています。

 肝臓は再生力のある強い臓器ですが、怒りに弱い臓器です。
 緊張ストレスは、交感神経過緊張を生じてエネルギーを多く消費するので、肝臓でブドウ糖産生を増やす一方、
脂肪をため込む働きを抑制します。
従って、緊張ストレスが続くと、脂肪を合成する機能が低下します。
 一方、弛緩(しかん)ストレスは、交感神経不活性(副交感神経過緊張)状態なので、エネルギー消費が少なく、エネルギーを貯め込む働きを促進します。
 一方で、肝臓の脂肪を分解する働きを抑制します。
 従って、弛緩ストレスが続くと、肝臓の脂肪を分解する機能が低下します。
 一般に、緊張ストレスの強い人は痩(や)せ体質の傾向があり、弛緩ストレスの強い人は太り体質の傾向があります。
 B型肝炎やC型肝炎などの発症の時期は、人によって大きく違います。
その違いは、慢性ストレス(免疫力低下)が大きく影響していることが予想されます。
 また、酒を飲み過ぎると肝臓が腫(は)れますが、すぐに元に戻ります。
ただ、慢性ストレスを抱えている人は、酒の影響を受けやすく、肝炎、肝硬変、肝臓がんに進む危険性があります。
 慢性ストレスがアルコールを求めるのかもしれませんが、飲み過ぎで肝臓がんになる人には繊細さを感じる場合が少なくありません(たくさんの人を見てきたわけではありません)。
それが、慢性的な精神的ストレスを生じさせているように思います。
 肝臓の病気も交感神経過緊張状態の継続が大きいと考えて良いでしょう。
副交感神経過緊張から脂肪肝を増やして肝硬変、肝臓がんへと移行する場合もあるかもしれません。