2025年2月

身体の新常識 第36話 五臓とは 肝について

2025年2月26日

 五行学説の中には、「五臓(ごぞう)」という考えがあり、「五臓」は肝・心・脾・肺・腎(かん・しん・ひ・はい・じん)の5つの臓腑のことを指します。
 ただし「五臓」は、西洋医学で考える臓器と同じ役割ではありません。
例えば、6+3k、肝は肝臓という意味ではなく、自律神経を調節したり、血を貯蔵したりする臓腑のことをあらわします。

 漢方の言葉は少し難しいイメージがありますが、ひとつひとつの意味が少しずつ理解できると、体調を整えるには何が必要なのかを理解できるようになります。
それでは、肝・心・脾・肺・腎の順番に「五臓」の役割を見て、理解をすすめていきましょう。

肝について
 肝は自律神経や情緒などをコントロールする臓腑です。

 ・ 疏泄(そせつ)をつかさどる
   疏泄には、全身の気をめぐらせ、精神状態を安定させる働きがあります。
  全身の気の流れがよくなると、睡眠・食欲などが安定します。
 ・ 蔵血をつかさどる
   蔵血とは、血液を貯蔵し、血液の流れを調節する働きです。
  血液を貯蔵することにより、目の疲れ・頭痛・めまいなどの症状を予防することができます。
 ・ 筋をつかさどる
   血液を貯蔵することにより、筋(すじ)に栄養を与え、
  関節の動きをスムーズにします。
 ・ 華は爪にあらわれる
   肝の状態は、爪にあらわれます。肝の血液が不足すると、
  爪にツヤがなくなり、割れやすくなります。*
 ・ 目に開きょうする
   肝の状態は目にもあらわれます。肝の血液が不足すると、
  目の乾燥・視力低下などが起こります。
 ・ 液体は涙
   肝が正常な状態のときは、涙は目を潤し保護してくれます。
  肝の血液が不足すると、目が乾燥したり、異物感を感じたり、
  夜に目が見えにくいなどの症状が起こります。
 ・ 情志(感情)は怒
   肝の気の流れが悪くなると、イライラしたり怒りっぽくなったりします。


3月 診療のお知らせ

2025年2月24日

 寒さのなかにも、ほんのり春の気配を感じるころとなりました。
お元気のことと拝察いたします。

 さて、3月は下記の要綱で診療・休診させて頂きます。

3月 3日(月)午後の診療のみ  臨時休診
3月14日(金)午後の診療のみ   臨時休診
3月20日(木)春分の日   平常通り診療


 まだ春寒の日もございますので、くれぐれもお体にご留意なされ、益々ご活躍されますことを祈念申し上げます。

身体の新常識 第35話 「ありがとう」で免疫アップ

2025年2月23日

 がん患者で、自然療法で自己治癒をした人たちを見ていて、共通しているなと感じることの一つに、「ありがとう」と感謝する生き方があります。
 彼らはみんな、朝起きたらまず生きていることに感謝します。
家族と今日も会えたと感謝します。
そしてご飯を食べれることに感謝します。
上ってくる太陽を見て「今日も朝日を拝むことができた、ありがとう」と手を合わせるのだそうです。
 何事にも感謝をする生き方をしていたら、頑張ったり、偉そうにする気にならなくなり、逆に謙虚で何にでも「ありがとう」という気持ちが湧いてくるのです。

 「ありがとう」という感情は、怯えや悲しさや悔しさと対極です。
心が満ち足りていて迷いがありません。
交感神経優位の緊張した生き方から、副交感神経の穏やかな生き方に変わっています。
 癌になったときに「なぜこの私が癌に…」と怒り、悲しんでいたのが、癌になった原因に気づき、「自分の生き方の偏りを癌が教えてくれたんだ。ありがとう」と思えるようになると、身体は回復に向かっています。

 日本には古来から「言霊」という言葉があります。
口に出して言うことで、それが自分に返ってくるという考え方です。
 感謝や祈りの言葉を口にすると、それを脳で聞いて自分に良いことが起こります。
日々、「ありがとう」と言っていると、自律神経も落ち着きます。
心の安寧を得られるようになり、癌が自然退縮する身体へと変わっていくのでしょう。

身体の常識 第34話 気血水とは

2025年2月19日

 気血水(きけつすい)の「気(き)」とは、生命を維持するための
エネルギー
のようなものと考えられています。

 気が停滞することを「気鬱(きうつ)」といいます。
うつ状態などの精神症状をきたします。
 順行すべき気が逆行することを「気逆(きぎゃく)」といいます。
発作性に咳、不安感、動悸、頭痛などがおこります。
 気の量に不足を生じることを「気虚(ききょ)」といいます。
疲れやすく、体がだるく、気力がなくなるなどの症状をきたします。

 「血(けつ)」とは、現代での血液や体液などに例えられますが
「気」とともに生命を維持するうえで、重要であり両者は不可分のものです。

 血の流れに障害をきたした状態を「?血(おけつ)」といい、
月経の異常、打撲による腫れ、肩こり、のぼせや冷えなどをきたします。
 また血の量が不足した状態を「血虚(けっきょ)」といい、
眼が疲れる、皮膚の乾燥や荒れ、顔色が悪い、こむらがえりなどの症状をきたします。

「水(すい)」も、生命の維持の上で不可欠のものです。
 この水が体の中で偏在した状態を「水毒(すいどく)」あるいは「水滞(すいたい)」
といい、めまい、頭痛、動悸、浮腫、下痢、尿量の増減などをきたします。


身体の新常識 第33話 陰と陽

2025年2月16日

 東洋医学の独特な陰陽学説は非常に難解な学区説ですが、その意味する所は、この世の現象を2つの対立する視点から分析すると理解しやすいのではないかという学説です。

 たとえば、太陽は陽であり、月は陰である。
 太陽は熱を放散し、明るく、暖かい存在ですが、月は引力により、海水を引き上げ、暗く、冷たく静かです。
 男性は陽で、女性は陰です。男性は外に向かって活動的に働き、女性は家庭を守り、潤いの性質をもつ存在です。
 このように、陽は火に代表され、外に向かって活動的であり、明るく、放散の性質をもち、陰は水に代表され、冷たく、寒く、静かで、内に向かって凝集の性質を持ちます。

 しかし、この陰と陽は見方、方向を変えると陰陽は変わります。
 
たとえば、日本列島は太陽に照らされて明るい時は陽に属し、地球の反対側は陰に属します。しかし、その逆になると、日本列島は陰に属し、地球の反対側は陽に属します。
 男性は上述したように一般的に陽で、女性は陰ですが、家庭内では明るく活動的な存在を陽とすれば女性は陽であり、疲れて寝ている男性は陰です。
このように、視点が変わればその位置づけも変わります。

 従って、陰と陽は絶対的なものではなく、相対的なものです。

 この相対的な見方によって、意味が変わるというのは、大変重要なことです。
 東洋医学において、陰虚内熱という言葉があります。
 陰が減り、陽が相対的に増えて熱が出るという現象です。
 東洋医学では昼間は陽に属し、午前10時から午後2時の間は陽の最盛の時間帯ですが、その後は徐々に陽が減り、代わりに陰が少しずつ増えて、午後10時から午前2時の間は陰の最盛期の時間帯です。
その後は再び陰が徐々に減り、陽が次第に増えて、陰と陽が1日の中で繰り返されます。

 このような昼間の陽の時間帯は活動的に動き、夜の陰の時間帯は潤いと昼間に傷ついた体を癒します。

 しかし、夜、睡眠を取らずに、運動したり、スマホをいじったり、考え事をすると、陽の時間帯と同じように活動的になり、その結果、陰が減り、相対的に陽が増えます。そうなると、夜中に上半身が火照ったり、足の裏が熱く、布団から足を出して寝たり、あるいは寝汗をかくなどの熱の症状が出ます。
そのため、睡眠が浅く、寝ても疲れが取れず、朝起きても体がシャッキとしません。
 このような状態では、寝る前に睡眠薬や安定剤を飲んでも、また熱冷ましの薬を飲んでも体調はあまり改善されません。
 大切なことは陰の時間帯は安静にし、潤いとゆとりをもち、夜中に熱が発生すれば潤いを補う漢方薬を飲むか、鍼灸施術をを受診して改善してください。

 アトピー性皮膚炎では皮膚が乾燥しています。
 しかし、同じ乾燥でも潤いが足りなく乾燥している場合と、皮膚炎によって水分が飛ばされて乾燥している場合があります。
 潤いが足りない場合は潤いを増やす漢方薬を飲んだり、保湿剤を塗布すればいいのですが、炎症がある場合は潤いを与えても焼け石に水ということになって、乾燥はなかなか改善しません。
 この場合は炎症を抑える漢方薬の服用、鍼灸施術が必要です。

 このように東洋医学では、同じように見える症状でも常に陰と陽という2つの要素相対的な視点によって分析して治療を行います。

身体の新常識 第32話 風邪やインフルエンザに罹って免疫を鍛えよう

2025年2月12日

 人間は長い歴史の中でインフルエンザと戦い、付き合ってきました。
 冬が近づくと、インフルエンザの予防接種が盛んに行われますが、自然の摂理からすれば、インフルエンザにかかるのは一概にわるいこととは言えません。
 人間の体は、風邪やインフルエンザに罹った後、免疫力が高まるからです。
ですから、毎年はやっている風邪やインフルエンザは、引いておいた方が免疫力が高まって、身体によいのです。

 学校や会社で風邪が流行しても、風邪がうつる人とうつらない人がいます。
風邪にならない人は、初めから免疫力が高いから、流行ってもうつらないのです。
特に、白血球の基本のマクロファージの段階で処理できると症状が出ないのです。
 弱った人が風邪をひくことで、みんなと同じレベルに免疫が上がるというのが、風邪やインフルエンザの役目です。
 「身体を鍛えるのは体操。免疫を鍛えるには風邪をひきなさい」

 実際、毎年、風邪が流行り出すと、そそくさと流行っている中心に行ってうつしてもらおうとしています。
しかし、そうしていると、風邪をひきたくてもひかなくなります。
もちろん、免疫力が高くなっているからです。

 日本人は抗菌だとか手洗いだとか、きれい好き過ぎて免疫力が弱っているようです。
しかし、やたらに手を洗ったりせずに、適当に汚れていても放っておくことで、免疫力を上げます。
 あまりきれい好き過ぎると、かえって免疫力を低下させることに繋がってしまうわけです。

身体の新常識 第31話 痛み止めは肩こりを悪化させる

2025年2月9日

 姿勢の崩れが肩こりや腰痛を招いているのです。
強いストレスが長く続くと血流の循環障害がおこり、骨の量が少なくなっていきます。
緊張状態が長時間続くと、骨の量がどんどん減っていくので、骨格、筋肉から悪い姿勢同じ姿勢でいるためで変形します。
姿勢が悪くなっていくと、肩・首・腰などが痛くなってきます。
 この時大切なのは、痛みを止めるために「痛み止め薬」を使うのでなく、ストレスを取り除き、運動をして身体を温めて血流を良くし、白血球の働きを促すことです。

 残念ながら、病院ではこうした考え方を把握していないのが現状です。
ですから、肩・首・腰が痛いと言って病院に行くと、まず「鎮痛剤」が投薬されます。
「鎮痛剤」は筋緊張を促進させるだけです。
「鎮痛剤」は血管拡張作用や痛み作用を持つ「プロスタグランジン」の産出を止めるので血流が低下し、筋緊張はかえって悪化するのです。
 筋緊張になるとますます血流障害が起こりますから、一時的に楽になっても、根本的な問題が解決していません。いずれまた痛みが起こります。

 デスクワークをする人は猫背になりやすいのですが、これは長時間同じ姿勢でいるため、背中から肩、首の血流が滞るからです。
特に首が前方に突き出すようになるのは明らかに仕事のし過ぎです。
必要以上に仕事をしているため、精神的にもストレスがかかり、身を守る反応が出ているのです。
 血流が滞ると身体が冷え、交感神経優位の緊張状態が続き、身体を痛め、病を招きます。

 こういう仕事をする人は、日頃から身体を鍛えていないために、より一層姿勢が崩れやすいということもあります。
合間に体操やストレッチをするのも大切です。
そして何より、必要以上に長時間、仕事をし過ぎているという認識が必要です。
 姿勢が崩れるということは、たいていの場合、生き方の無理や偏りが原因です。
それを的確に指摘できると、根本から治癒できるのです。
 そうでなければ、揺すっても緩めても温めても、いずれまた同じことを繰り返し、病気は再発するでしょう。

身体の常識 第30話 五行とは

2025年2月1日

 五行学説とは、地球にあるあらゆるものは、「木」「火」「土」「金」「水」(もくかどきんすい)の5つの要素から成り立っていると考える思想のことをいいます。
 東洋医学は五行学説の考えをもとに、カラダの状態や治療、養生法をとりいれています。

五行学説の元になる五行おのおのの関係性とは

 五行では、「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素が、お互い助け合ったり、抑制したりすることによってバランスを保っています。
 「木」「火」「土」「金」「水」には、それぞれに特徴があり、人間の体にある五臓に当てはめることもできます。
五臓では、肝は木、心は火、脾は土、肺は金、腎は水とつながっています。

「木」
 木は、草木のように上や外に向かってぐんぐん伸びる様子を意味しています。木の特性には、生長・発散・上昇などがあります。

「火」
 火は、炎のように火が燃え盛る様子を意味しています。火の特性には、炎上・上昇などがあります。

「土」
 土は、植物を生み出し、動物が生活するための土台となります。土の特性は、生成・発育などがあります。

「金」
 金は、澄んだ光沢感を持ち、清涼感のある金属を意味しています。金の特性は、清涼感・清潔などがあります。

「水」
 水は、すべての物を潤し、上から下へ流れていく様子を意味しています。水の特性は、下降・寒冷などがあります。

 五行の法則には「相生」(そうせい)「相克」(そうこく)「相乗」(そうじょう)「相侮」(そうぶ)という考えがあります。
五行は、お互いに助け合ったり抑制したりすることによってバランスを保っています。

相生(そうせい)
 相生は赤矢印の部分で、次の物事を促進し、助け、補う働きのことをいいます。例えば、木が燃えると火を生じ、火は燃えると灰が残り土を生じるといった意味をあらわしています。

相克(そうこく)
 相克は図の中央にある黒の矢印の部分で、物事の成長や機能に対して抑制する働きのことをいいます。例えば、木は土の養分を吸い取り、火は金属を溶かすといった意味をあらわしています。

相乗(そうじょう
 相乗は強いものが弱いものを抑える働きのことをいいます。相手に対して抑制したり、制約したりするのが過剰になることです。例えば、木の働きが過剰になると、土の養分も過剰になります。

相侮(そうぶ)
 相侮は弱いものが強くなり、強いものを抑制する働きのことをいいます。相克の関係とは反対になる関係のことです。例えば、土は木の栄養分を吸収し、木が成長しすぎないようにします。

 五行色体表では、私たちの取り巻く世界を五行に分けて判断することができます。「木」「火」「土」「金」「水」と人間の五臓が関連付けられたものが五行色体表です。
例えば、春・夏・長夏・秋・冬の5つの季節を中心に考えると、五臓は肝・心・脾・肺・腎と分かれています。
五行色体表を見ると、春は五臓の肝に影響を与えやすいといったことが理解できます。

 特に五臓は、五色・五官・五声などと関連づけられているため、顔の色艶・声の大きさ・動作などによりその人の体質や症状を見極めることができます。
中医学では、この五行の考えを
もとに診断したり治療をしたりします。

 五行色体表は、その季節に起こりやすい症状や養生法などを説明することができます。
例えば、春は五臓の「肝」に負担がかかりやすく、五気によると「風」の影響を受けやすい季節でもあります。
肝に負担がかかりすぎたときは、ストレスに効果のあるレモンやみかんなど五味の「酸味」の食材が向いています。五官によると肝の症状は目にあらわれます。
目が疲れたり、視力が落ちたりすることもあります。情志(感情)の観点からだと、精神的に怒りっぽくなるのも春の特徴です。