2025年1月6日
身体の常識 第26話 植物性脂肪と動物性脂肪どちらが健康的??
食品から摂取する脂肪の中で、体にいい脂肪とはどのようなものなのか。先ごろ、新たに発見された50年前のデータをもとに行った最新の研究結果が発表された。それによれば、摂取する脂肪を動物性から植物性に切り替えることは、不必要なだけでなく見当違いな可能性もあるようだ。
心臓の健康に及ぼす影響に注目した今回の研究結果は、コーンオイル(植物性脂肪)を使っている人は、動物性脂肪を使っている人よりも心臓発作のリスクが高まる可能性があることを示唆している。
だがこの研究にはいくつかの問題点もあり、今回の結果を受けて脂肪をめぐる議論が改めて活性化するかどうかは定かではない。
今回、米国立衛生研究所(NIH)、ノースカロライナ大学とその他複数の大学のチームは、1960年代後半に、精神科病院と介護施設の入院患者・入居者9,400人を対象に開始されたデータ(対象者がこの2種類のコミュニティーに属する人々のみということ自体が問題である可能性がある)を調査した。
上記データの研究結果は、理由は不明だが、1989年になってようやく発表され、動物性脂肪から植物性脂肪に切り替えるとコレステロール値に良い影響があると報告。
心臓病への影響については、報告していなかった。
しかし今回、同チームが当時の全データセットを発見。改めて確認を行ったところ、植物性脂肪を摂取した人々は確かにコレステロール値が下がったものの、一方で心臓発作のリスクが大幅に高くなっていたことが明らかになった。
研究チームは、もともとの研究のデータが不完全だったことが、摂取すべき脂肪と避けるべき脂肪についての誤った指針につながったのだと主張する。「不完全なデータが発表されたことで、飽和脂肪酸をリノール酸が豊富な植物油に置き換えることの利点ばかりが強調され、潜在的リスクが過小評価されることにつながった」
だがこれについては、既に分かっていたことだ。オメガ6脂肪酸(リノール酸)には、幾つかの弊害があることも明らかになっている。イェール大学予防研究センターの創設者デービッド・L・カッツはこう指摘する。「オメガ6脂肪酸の過剰摂取は、長鎖オメガ3脂肪酸の生成を阻害するなど、多くの問題との関連があることが明らかになっている」
「脂肪酸のバランス不良やオメガ6の摂りすぎがもたらす害については、以前から分かっていた。だから米国では、今では高オレイン酸の一種(高一価不飽和脂肪酸)を生成する品種を使い、今回の研究論文で指摘された潜在的な害を回避するひまわり油が今では主流になっている。また、同様のことが大豆油においても進んでいる」と話す。
つまり科学界は以前から、オメガ6脂肪酸の過剰摂取のリスクを認識しており、食品業界はそれを受けて商品の“微調整”を行ってきたのだ。
今回の新たな研究は、動物性脂肪をコーンオイルに替えることは、健康上の問題を解決する以上に引き起こす可能性があることを示しているにすぎないのかもしれない。そしてカッツが指摘するように、その報告はさほど有益なものでもない。「かつてはそうであったかもしれないが、今の植物油は敵ではない」。
ここ数年の考え方は、80年代の“脂肪否定”の名残りとして私たちに残る“脂肪嫌い”は見当違いだというものだ。
トランス脂肪酸については明らかに体に悪いことが判明しているが、そのほかの脂肪については概ね、バランス良く摂取すれば体にいいか、あるいは適度な量であれば問題ないことが判明している。
そして専門家たちは長年、食品から健康的な油をバランス良く摂取することを奨励している。
「飽和脂肪酸の代わりに、さまざまな食品から不飽和脂肪酸をバランス良く摂取することが体にいいという有力な証拠がある」とカッツは言う。
「推奨されているのはナッツ類、シード類、アボカド、魚といった自然な食品からの油の摂取だ。体に必要なのも、体がよく反応するのも、バランスなのだ」
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