2024年3月

漢方の暮らし 第84話 西洋医学には「冷え性」という病名はない

2024年3月30日

 漢方では「冷え性」という病名(証)があります。これは「未病」です。
「未病」とは、医学でいう健康と病気の間のグレーゾーンの状態をいいます。
漢方ではこの「未病」を治す方法がいろいろある点が西洋医学と比べての長所です。

 冬になるとやる気が起きない、寒くて布団から出らでない、寒い日は一日中寝ていたい、寒い日は元気が出ない
など、「冷え性」の方は特に冬になるといろいろな不調が起こりやすくなります。
 また風邪をひきやすく、治りにくいといった免疫力低下の原因になります。

 「未病」「冷え性」だけでありません。
なんだかいつもイライラする、些細なことで不安になる、ストレスに弱い、集中力がない、食べないのに太る、
雨の日になると身体が怠い、下半身が太る、シミやしわが出やすい…そういった不調こそ「未病」です。
 「未病」は毎日のちょっとした生活習慣、食事を見直すことで改善することができます。
季節ごとに起こりやすい「未病」を改善する工夫や食べ物について一緒に勉強して参りましょう。
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漢方の暮らし 第83話 寒がり水毒と暑がり水毒

2024年3月25日

 一見水太りでいかにも「水毒」のある人には二つのタイプがあります。
冬に調子が悪くなる人と、夏に調子が悪くなる人がいます。

 寒がりで冬の季節や寒い日に調子が悪くなる人は「寒湿タイプ」といいます。
多くの方はクーラーや冷たい食べ物で調子が悪くなり、浮腫みや膝の痛み、頭痛、眩暈などの不調を抱えています。

 熱がりで汗っかき、冷たい飲み物やクーラーが好きな人は「湿熱タイプ」です。
ジュクジュクした皮膚病や、体臭、口臭などの不調に悩みます。

 どちらのタイプの方も運動や食事などの生活習慣の偏向の結果起こっている症状、つまり自己責任になります。
特に「湿熱タイプ」の方は病院の血液検査で、糖尿病や高脂血症、高血圧を指摘されるようになるので、若いうちから食生活、運動などの生活習慣の改善が急務です。
 「寒湿タイプ」「湿熱タイプ」どちらも原因となる生活習慣があるのです。
原因となる生活習慣を見直すことが必要です。

 寒涼性
  冬瓜、ナス、小麦、ごぼう、大根、きゅうり、トマト、豆腐、白菜、バナナ、梨、柿、そば、緑茶、塩、
 白砂糖など

 温熱性
  生姜、シナモン、山椒、にんにく、羊肉、鶏肉、エビ、もち米、黒砂糖、栗、八角、長ねぎ、香菜、
 松の実など

 平性
  長いも、大豆、とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、卵、クコの実、うるち米、はちみつ、黒きくらげ、
 ニンジンなど

 「寒涼性の食材は水分のある野菜や果物が多く、体を冷やすなど余分な熱をとるのに役立ちますよ。
一方で温熱性の物は、生姜やにんにく、ねぎなど辛い物や刺激のある食材が多く、血液の流れを良くして新陳代謝を促進します。
どちらにも属さない平性は、米などの穀物系や体のエネルギー源になる食材が多いですね

漢方の暮らし 第82話 水毒の二つの原因

2024年3月19日

 「水毒」が起こる原因の一つは、外からの「湿気」です。
例えば、日本の梅雨時のように「湿気」が高い季節、また「湿気」の多い所で働いたとか、雨に打たれたとかの原因で起こる停滞を「外湿」といいます。

 「水毒」のもう一つの原因は、胃腸の働きの低下によって起こるものです。
生ものや冷たいものの過食、脂っこい食事、飲酒過多などで胃腸の働きを悪化し、水捌けが悪くなった状態です。
これを「内湿」といいます。

 「外湿」は自分でコントロールすることができませんが、「内湿」は改善可能です。
普段、胃腸の働きに自信ある方でも、飲みすぎ、食べすぎ、刺身などの生ものや冷たいものの摂りすぎなどで一時的に「水毒」の症状が出るのを経験されているでしょう。

 日本の夏は「湿気」が多く、また日本人は胃腸の弱い体質といわれ、「水毒」の症状がある人は多いのです。
さらに、「内湿」のある方は、外からの「湿」も呼び込みやすいのです。
 「浮腫み」の症状に関して、西洋医学では「利尿剤」の内服や塩分を控えるなどの対策を取ります
 漢方では「五臓六腑」のチームで改善する方法を取ります。
活躍するのは「脾」「肺」「腎」です。

 「脾」の役割は、「水」の生成と運搬です。
 「肺」の役割は、「水」の運搬と排泄です。
 「腎」の役割は、「水」の再吸収と排泄です。

 暑さや湿度は胃腸を苦しめ、寒さは「腎」の働きを低下させ、乾燥は「肺」の働きを悪くします。
冬の寒さは夜間尿や尿漏れに、夏の暑さと湿気は浮腫みや眩暈や痛みに、秋の乾燥は肌荒れや皮膚病のおもな原因になります。


漢方の暮らし 第81話 尿漏れや頻尿は大丈夫ですか

2024年3月15日

 まだまだ寒いこの頃、夜間尿尿漏れするようになったという方、いませんか。
それは「腎」が弱っている証拠です。
寒い季節は、「腎」の働きに影響しやすいのです。
 ちなみに「腰は腎の器」といって、腰が痛くなったり、すぐに座りたくyなったり、つまづきやすくなったらそれも「腎」が衰えた証拠です。

 「腎」には「精」を貯蔵する働きのほかに、尿を体内に貯めたり、排泄したりする機能もあります。
なので、「腎気」が衰えると、まず尿に異常が起こります。

 「腎陰」が衰えると、小便が出渋りが起こったり、尿が赤くなります。
 「腎陽」が衰えると、頻尿、尿が薄くて量が多い、夜間尿、遺尿、失禁などの症状が起こります。

 頻尿を防ぐ食材とは

 老化による頻尿には、腎の働きを高める黒い食材がおすすめです。
黒きくらげ・黒豆・わかめ・ひじきなどがあります。
 また、カラダの冷えを防ぐために辛味の食材もおすすめです。
しょうが・ねぎ・シナモンなどがあります。
 緊張やストレスには、気の流れをよくするレモンなどの柑橘系などがあります。
 それぞれ、自分の体質に合わせた食材を選んでいくことが大切です。

頻尿が気になる人は冬の過ごし方に注意

 冬は、人の成長・発育・生殖のために必要な腎に大きな負担をかけます。カラダの中の気や血の巡りも滞ってしまうため、カラダの中の血行や代謝も低下します。
 漢方では、腎の機能が衰えやすい冬は老化が促進しやすいと考えられています。
冬は、ダイエット・冷たいもののとりすぎなど、体に負担がかかることは控えましょう。
他の季節よりもしっかりと睡眠時間を確保することも大切です。
 漢方では、冬は普段より早い時間に寝て、朝は太陽が出たころに起きるのがよいと考えています。
腎を消耗すると、頻尿だけではなく、耳鳴りや白髪など老化の原因にもなります。
また、冬に養生をしておかないと、春になっても手足が冷えたり、気温の変化に対応できなくなったりするなど、春の不調を引き起こすことも考えられます。

漢方の暮らし 第80話 男性は8の倍数で精気が変化する

2024年3月11日

 人間の一生は大きく分けると「成長・強壮・老衰」の三段階に分けられます。
つまり「精気」「上昇・頂点・下降」つまり「少ない・多い・少ない」と変化するのです。

 「黄帝内経」の素問・上古天真論には、次のように書かれています。

 8歳になると「腎気」が充実し始め、毛髪は元気で伸びて、歯が生え始める。

16歳になると「腎気」は旺盛になり、「精気」が充満して射精でき、男女合体で子供ができる。

24歳になると「腎気」は充実し、筋骨はしっかりして、身体も伸びて最も盛んになる。

32歳になると筋肉が強壮になり、肌肉が豊かになる。

40歳になると「腎気」が衰え始め、髪が抜け始めたり、歯が悪くなり始める。

48歳になると「陽気」が上部から衰え始め、顔面はやつれ、髪ともみあげはゴマ塩になる。

56歳になると「肝気」が衰え、筋脈の活動が自由でなくなり、性欲も少なくなり、肉体的にも疲れがたまる。

64歳になると歯は抜けて、髪も抜け落ちてしまう。

 当時は16歳で大人の仲間入りをして32歳が精気のピークで、48歳以後は精気がどんどん少なくなってしまうと言われていたのです。
 現代と比べて、どうでしょうか?


漢方の暮らし 第79話 アンチェイジングの鍵を握るのは精

2024年3月8日

 「腎」「精」を貯蔵しています。

「気」とか「精」とか、西洋医学では実体を証明できないものですが、「気力」とか「勢力」とか言えばわかりやすいでしょうか。
ざっくり言えば、「腎」「精力」を蓄えているのです。

 中医学の「腎」に宿るという「精」とは「成長・発育などの生命エネルギーの源となる栄養物質」だとされています。
 現代的に言えば、「精」は「成長ホルモン」「生殖ホルモン」のような物質だと考えています。
具体的に言うと、子供の成長や、男子では精子を作ったり、女子は月経や卵子の生成などに関係しています。

 そこで、「精の不足」は、子供では成長の遅れ、男子では精力減退、女子では月経不順・不妊などに関係するのです。
 また解剖学的な副腎に相当する働き、つまり免疫力などの働きもあります。

 以上の点から、一番重要な問題である「老化」にも深く関係しているのです。
そう考えると、すごく大事な働きじゃないですか。
「腎」の働きは、若さを保つのに一番関係あるのです。


漢方の暮らし 第78話 免疫力アップには睡眠が必要

2024年3月5日

 季節にもあるように、一日にも「陰と陽」の変化があります。
「陽気」は昼間の12時頃が最も盛んになって、エネルギーが出ていき、夕方になると「陽気」はだんだん衰えてきて「陰」と「陽」が入れ替わります。
 「子の時刻」という23時~1時頃は、「陰」が最も深い時間帯です。
この時間に眠りつかないと、昼に活動したエネルギーが回復されません。

 草木も眠る「丑三つ時」泥棒のゴールデンタイムですが、健康のための睡眠時間は23時から3時です。
午前1時から3時までの時間は「五臓六腑」の「肝」な働きが盛んになって血液をため込む時間帯です。
この時間帯にぐっすり眠っていると、血液が「肝」に貯蔵されるのです。
 血液の不足によって起こる月経不順や眼精疲労、足つり、爪がもろくなるなどが解消されます。
 この時間帯の睡眠は、
お肌に艶が出て髪が増えるので美容界では「丑の刻」を「お肌のゴールデンタイム」と呼んでいるそうです。

 つまり、「23時までに床に入り、3時頃までぐっすり、充分に睡眠をとって肝の血を補い、昼間の陽の活動の時間に備える」ことが大切なのです。
 23時から3時までの深い睡眠は、冬に限らず、春夏秋冬いつの季節にも必要です。

 といっても、仕事の関係で無理という方もいらっしゃるでしょう。

 「メラニン」というホルモンは暗くなると分泌され眠りを誘ってくれるので、欧米のドラッグストアなどで販売され「睡眠ホルモン」と呼ばれています。
 日中は「セロトニン」が働き、「メラトニン」は分泌が少なくなります。
「セロトニン」は13時間くらい働いています。
そして「セロトニン」が引っ込むと今度は「メラトニン」の出番になります。
「メラトニン」は明るい光が入る日中はひっそり引っ込んでいて、夜暗くなると分泌が始まり眠くなるのです。

 コンビニや夜の勤務の多い看護士さんなど明るい光の中では夜でも「メラトニン」の分泌が低下することがわかっています。
「セロトニン」に引っ込んでもらわないと、「メラトニン」は働かないのです。

 海外に出張していた社員のために、太陽の光線を使った時差ボケを治す部屋があるそうです。
夜勤で家に帰ったら、アイマスクを利用して、暗い状態を作って、自分専用の「ゴールデンタイム」を作り出してみるのもいいかもしれません。

漢方の暮らし 第77話 冬のおすすめ早寝と朝寝坊

2024年3月2日

 「黄帝内経」には、冬は早寝して朝寝坊するくらいの方が良い、記載されています。
朝が苦手な方にはビッタリですね。

 一年には「陰陽」の移り変わりがあります。
3月の春分の日は朝と夜の時間が同じになって、そこから本格的に「陽」の出番です。
冬に蓄えたエネルギーを少しずつ外に出していく季節です。

 6月の夏至は「陽気」が最も盛んになって木々は生い茂り、「万物が成長する季節」です。
エネルギーが一番高まる季節、長くなった一日を有効に過ごすために、夜は遅くまで起きて仕事をして朝は早く起きるのが良いのです。

 9月の秋分の日からまた「陰陽」が入れ替わり、「陰」が生まれ、「万物が成熟して収穫される季節」です。
少しずつ冬の陰に備えてエネルギーを蓄え始める時です。

 12月の冬至は「陰」が最も深くなり、「万物の生気が閉じこもり、陽の季節に備えて休養する季節」です。
冬は春や夏の成長を促し、秋に収穫を迎えるためのエネルギーを蓄える季節なのです。
 無理な活動を控えて、遠慮しないで、のんびり過ごしたい方に都合の良い季節です。