2023年3月25日

漢方の暮らし 第13話 肝は感情をコントロールする

2023年3月25日

 漢方における「肝」は、西洋医学の「肝臓」とは意味合いが違います。
 自律神経などという言葉がなかった時代、感情のコントロールの乱れが起こる理由が漢方では「肝」の働きに関連付けています。
 「気」「血」は正常なら全身をスムーズに巡っています。
「肝」は、この流れをコントロールする働きを担っているのです。
つまり、「肝」という臓器は身体の中の「気」の流れをあちこちにスムーズに行きわたらせるという働きがあると考えられています。
 春の「陽気」は気の巡りを活発にして、そのために気分がエスカレートしたり、逆に気が廻らなくなって、
鬱々したという症状が出やすいのです。
「気」が渋滞を起こすと「気滞」という症状がでたり、「気」の流れが悪くなると「肝鬱」という症状が出てきます。
このような「気」の流れをコントロールする働きがあるので、「肝は感情をコントロールする」という表現で説明されます。
 現代的に解釈すれば、交感神経が働きすぎたり、働きが悪くなった時の状態と言えます。

 物事に動じず、左右されない人を「肝が太い」とか「肝が座った人」「肝っ玉母さん」という言葉があります。
「肝」と感情が結び付けられていることの表れだと言えます。

 「肝」にはもう一つ、五臓六腑チームの中で担っている仕事があります。
それは血液を貯蔵することです。
 「肝」は何等かの事情で血液が不足したときに、必要な部分に血を届けているのです。
例えば栄養不足で血液が足りなくなっり、出産や生理の後、運動した時、過剰な出血などで、「肝」に十分な血液のストックがなくなるといろいろな不調が起こります。

 「肝」の血液不足は、免疫力低下の原因になります。
免疫細胞は血液に乗って体中の隅々までパトロールすると、ウイルス・細菌と戦う機能が低下してしまうのです。

 また「肝」は、目・爪・筋肉などと関係しているので、目の疲れ、目の渇き、筋肉の引きつり、痺れ、爪が割れる、生理が遅れる、無月経、夢を多く見て眠れないなど様々な不具合が起こります。

 「肝」の血液は眠っているとき、つまり副交感神経が働いているときに補充されます。
睡眠不足や過労などが続くと、自律神経のバランスが乱れて、臓器に血の不足が起こると考えられます。

 現代的に解釈すれば、「肝」の「感情をコントロールする働き」と「血液を貯蔵する働き」は、自律神経のようなものです。